声優×先輩後輩×百合なガールズラブコメ小説「わたしの百合も、営業だと思った?」をレビュー!
「わたしの百合も、営業だと思った?」の簡単な概要
「わたしの百合も、営業だと思った?」とは、KADOKAWA・電撃文庫より2023年3月10日に発売された著者:アサクラネル先生、イラスト:千種みのり先生による百合小説。著者であるアサクラネル先生は2021年10月にも電撃文庫より百合小説「彼なんかより、私のほうがいいでしょ?」を発表されており、百合業界でも活躍されている百合作家様となります。
本作は売れっ子声優である仙宮すずねが推しのアイドルが引退してしまい長らく落ち込んでいたところ、自分の所属している声優事務所に推しのアイドルだった鏡月かりんがある日突然やってきて、先輩・後輩として関係を深めていく作品です。
仕事とプライベートはちゃんと分けようと思いつつも推しと再び出会えたことに感激しドギマギしてしまうすずね、そんな内心を知らないのか積極的にすずねとの距離を詰めようとしてくるかりん。「わたしの百合も、営業だと思った?」はそんな二人の関係性を描き、且つ恋愛小説としてキレイに落とし込んだ作品です。
「わたしの百合も、営業だと思った?」の魅力
まさかの再会
冒頭でもご紹介した通り、本作は売れっ子声優であるすずねの所属事務所に推しのアイドルであったかりんがやってきてドギマギしていく様を描いたストーリー。ある日突然あえなくなってしまった推しと再会できたことに内心大喜びするものの、”先輩”として凛として立ち回るすずねですが、それでも彼女の一挙一動に心を奪われてしまう描写が作中で入念に描かれています。
お酒を一緒に飲みリラックスしてる姿や、一緒に職場に行く途中のタクシーで腕に触れてしまうシーンなど、アイドル時代の彼女の姿しか見ていなかったすずねはかりんとの至福のプライベートな時間を存分を堪能していきます。
推しに対する感情がどんどん強くなる様子がこれでもかっと存分に描かれており、当初は「自分はガチ恋勢ではない」と言い聞かせているかりんが次第に恋心を自覚していく様は本作の百合小説としての大きな魅力です。
二人の関係は百合営業??
そんなすずねの内心とは別に、事務所所属の日からすずねにずっとべったりなかりん。毎日メッセージのやり取りをし、スケジュールが空いてる日は二人でデートに行くなど関係を深めていきます。
声優オーディションに行く際もかりんから一緒に行こうと誘われドギマギしてしまうすずね。それでも彼女は先輩として頑張って立ち振る舞いますが、かりんからの猛アタックについつい「彼女と付き合う自分」を少しずつ想い始めていきますが、推しと一線を越えてしまうことにずっと葛藤を抱きます。その感情描写が非常に丁寧に描かれており、ページを読み進める手が止まりませんでした。
わたしは、あなたが好き
そんな二人は晴れて同じアニメのオーディションに合格し、アニメのメインキャラクターを演じることに。声優ラジオも始動したことで二人の関係はより深まっていき、物語後半ではラジオ配信中にすずねが告白をするという大きな局面を迎えます。
様々なトラブルや感情を乗り越えたうえで遂に迎えるこのシーンは物語の中で最も心に響く場面で、ストーリーの盛り上がりも相まって二人が結ばれた時の喜びは凄まじいものです。この喜びは是非百合好きの方には読んで実感してほしいです。
「わたしの百合も、営業だと思った?」はこんな方向け
ここまで存分に語らせて頂きました「わたしの百合も、営業だと思った?」ですが、本作を是非とも勧めたい方によりわかりやすくポイントを紹介していけたらと思います。アサクラネル先生の「わたしの百合も、営業だと思った?」ですが、特に以下のタイプの百合作品が好きな方にオススメの作品です。
①大人の女性たちの恋模様が好きな方
本作は基本的に大人の女性たちが登場する百合小説となっており勿論メインキャラであるすずねとかりんも両方とも成人された女性となっております。その為、作中では一緒にお酒を飲みに行って距離を詰めたり、他の女性との関わりなどが存分に描かれております。
また本作では早い段階で主人公であるすずねが自身がレズビアンであることを告白しており、大人女性による百合恋愛模様というのが押し出された作品です。
②声優のお仕事の雰囲気を知りたい方
本作での恋模様は声優事務所という一般的な職場とは異なる舞台で描かれておりますが、ただ舞台として用意されているだけではなく、仕事に励むすずねやその周辺の人間模様などが綿密に描かれており、お仕事物としてもとても楽しめる作品です。
「声優ってこんな感じで仕事してるんだ」というのがとても伝わりやすく、且つその要素がしっかりとメインの百合ストーリーにも大きく関わってくるため、声優としての要素も非常に魅力的な作品に仕上がっております。
③ちょっぴりハラハラドキドキなストーリーを楽しみたい方
本作のメインキャラクターであるかりんは、人気アイドルから声優に転身したことや、それらに纏わるいざこざなども作中で描かれており、これらの要素がよりストーリーを大きく盛り上げていきます。
例えば元アイドルということで何かコネでも持っているんじゃないかと同業者から妬まれる描写や、スキャンダラスな話も関わってきて、二人の関係性がどのように変化していくのかも大きな魅力です。
ハラハラするとは言ってもめちゃくちゃブラックで重たい話……というわけでもなく、適度なスパイスぐらいの緩急あるストーリーとなっておりますので純粋に楽しむことができます。
ここまで長々と語らせて貰いましたが少しでも本作の魅力を感じ取ってもらえたら百合好きとしての冥利に尽きます。「わたしの百合も、営業だと思った?」はとても読み応えのある社会人百合ストーリーとなっておりますので、2人の恋の結末やタイトルに込められた意味などは是非ともご自身の目で確かめてみて下さい。
それではここまでお付き合いいただきありがとうございました。アサクラネル先生の「わたしの百合も、営業だと思った?」は全国書店・電子書籍ストアにて絶賛販売中でございます。
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わたしの百合も、営業だと思った? (電撃文庫) |