長きに渡って愛されてきた人気百合漫画「あの娘にキスと白百合を」の最終巻である10巻が2019年3月に遂に発売され完結を迎えます。これまで多くの百合好きに感動と幸せを与えて下さった本作の完結を記念して、著者である缶乃先生にご協力いただきインタビューをさせて頂くことができました。
突然のお願いに快く引き受けてくださった缶乃先生、そしてコミックアライブの編集様方本当にありがとうございます。それでは早速インタビューに参りたいと思います。
『あの娘にキスと白百合を』缶乃先生インタビュー
名前 : 缶乃(かんの) Twitter: @_canno 2013年11月より月刊コミックアライブ(KADOKAWA)にて「あの娘にキスと白百合を」を連載開始。2015年3月には一迅社・百合姫コミックスより著者初の作品集「サイダーと泣き虫。」が発売。 |
きっかけは「百合をやりましょう」
缶乃先生:昔、コミティアで創作百合本を出していて、そこで声をかけてくれた編集さんに「百合をやりましょう」と言われたのが最初のきっかけでした。
その後編集さんに提出したあらすじとキャラ表がベースになっています。最初の案には白峰と黒沢の話(これはほぼ今のままです)、瑞希と後輩の女の子の話(後輩の女の子は本編に出てきてません)と、女の子と他校の女の子と他校の男の子の三角関係の話(これは全キャラ本編に出てきてないんですが、1話の扉絵左端に形跡があります)を提出しました。その後に複数の百合カップリングによるオムニバス形式に決まりまして、キャラが増えたり減ったりして今に至ります。
▲ 1話の扉絵の左端をよーく見ると、確かに他校の制服が…!
缶乃先生:当時私の担当だった編集さんに「オムニバス形式でいきましょう」と提案されたからですね。最初は各カップリング1話ずつで組み立てていたんですが、途中で2話ずつになり、大体一冊でふたつのカップリングを描く感じになっていました。オムニバス形式というのは最初から意識してましたが、一巻毎に主要キャラが異なるようになったのは結果的にそうなったという感じです。
オムニバス形式にしたことで、コミックス6巻や8巻では異なるカップリングを平行して書くことで演出できるものがあったと思うので、大きな意味があったと思います。
缶乃先生:描いていて私自身のテンションが上がることです。カップリングでも展開でも、私の「これ最高!!!!」が伝わると信じているので、基本的に気持ちが高ぶるものを選ぶようにしていました。
「あのキスは最初は2巻か3巻で終わると思っていました」
缶乃先生:実在っぽい背景は大体実際にロケハンして描いています。第5話に登場する駅や、第23話に登場する駅なんかは実際写真を撮りに行って描きました。
駅舎なんかもほぼそのまま描いています。ただ、海までの道のりとかはかなり色々混ぜているので、実際の地理とは異なる部分もあります。
缶乃先生:特に思い入れがあるところだと、1話か20話かな……と思います。
1話はもう1話なだけで思い入れがあるんですが、それまでキスシーンらしいものをほぼ描いてこなかったので、初めて描いたという意味で印象が強いです。
20話は陸上部の夏祭り回ですね。1巻で陸上部のふたりを描いた時からいずれ描きたいと思っていました。ただ「あのキス」は最初は2巻か3巻で終わると思っていたので半場諦めていたのですが、有難いことに連載期間が延びたので、ページ数もかなり割いてキスシーンが描けました。なので様々な方面で良かった……という感情が強く思い入れがあります。
缶乃先生:どのカップリングも好きなポイントがあるんですが、一番を選ぶとなると白峰&黒沢ですね。やっぱり最も長期間描いてて付き合いが長いのと、最初人間性が薄かった白峰と黒沢が人間になるところまで描くことができたので、自分の子ども……というとちょっと違うんですけど、良かったな……と思います。
缶乃先生:はじめに「こういうカップリングが描きたい」(例:先輩と後輩でバディものっぽい話がやりたい)という感情があって、次にキャラクターを作ります(例:好きなカップリングを煮詰めよう…後輩は美人受…であれば先輩は普通であることが可愛いかんじの攻…)。ストーリーの展開によって多少ズレたりします。
外見については、ほかのキャラクターとの兼ね合いがあるので、何パターンか考えて編集さんと相談してました。
缶乃先生:いつきは24話で心を開くところまでしか考えていなかったので、それ以降はライブ感溢れる感じでお送りしていました。
外見は設定の段階で美人と決まっていたので、外見に気を遣っていそうな感じの女の子の理想像を描きました。超初期の設定ファイルを見直したら、いつきには彼女にべったりの双子の妹がいたらしく、なにか違うことをやろうとしていた形跡がありました(現在版では双子の妹はいません)。
缶乃先生:自分の経験なんかを細切れにして各キャラに乗せているところがあるので、一番というと結構難しいんですが、最も投影されているのが白峰なので、自分では白峰だと思っています。他人に訊くと千春と言われるので正確には千春かもしれないです。
「好きなものはやっぱり憧れの存在へのコンプレックス」
缶乃先生:百合を好きになったきっかけですね…昔は百合にそれほど興味はなくて、『マリア様がみてる』を読んで「百合って面白いじゃん!」となり百合が好きになりました。
…………と今まで思っていたんですが、質問をいただいて思い返したところ、それ以前に読んでいた漫画版『ギャラクシーエンジェル』のミルフィーと蘭花の関係が好きだったし、さらにその前に見ていた『セーラームーン』でまこ亜美が好きだった記憶が蘇ったので、はるか昔から百合が好きだったのかもしれません。
缶乃先生:今回さまざまな質問を頂いて、それについて考えているうちに、好きなものはやっぱり憧れの存在へのコンプレックス…コンプレックスだな!という気持ちになったので、コンプレックスを活かせそうな大人百合が描きたいです。
缶乃先生:何も決まってないので予定とは言えないんですが、やりたいことはあるのでひっそり準備をしています。百合と家族を絡めた何かがやりたいです。
「ご飯は抜いても死なないが百合を少しでも抜くと心が死ぬ
缶乃先生:ご飯は一般的に一日三食でたびたび抜いても死にませんが、女と女の関係性については朝起きてから夜寝るまで欠かさず考えている且つ抜くと心が死ぬので、百合は主食です。
缶乃先生:こちらこそたくさんの質問ありがとうございました! 回答を考えながら連載中のことを思い返して懐かしくなったりしました。5年もの間お付き合いいただいて本当にありがとうございます。3月に発売する10巻まで見届けていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!!
缶乃先生、お忙しい中インタビューにご協力頂きまして誠にありがとうございました。「あの娘にキスと白百合を」最終巻10巻は3月23日に通常版と特装版が同時に発売。感動の結末を是非その目に焼き付けて下さい。
関連書籍
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